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ムードに抗うことはできるのか ―映画『ゲッベルスと私』寸評


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 『ゲッベルスと私』という映画を見ました。ナチス政権下の実質No.2と言われた人物がゲッベルスです。このゲッベルスの秘書として働いたブルンヒルデ・ポムゼルという女性の独白が当時のアーカイブ映像を織り交ぜながら2時間続く映画です。決して七夕のムーディーな夜に見る映画ではないのですが(笑),たまたま時間が出来たので行ってきました。

 まずとにかく驚いたのはこの方が103歳であるということ。顔は皺だらけなのですが,語り口は決して100歳を超えた方には見えず,記憶もしっかりしているようでした。ちなみに,享年106歳。この映画が撮影された3年後に亡くなったそうです。 

 見終えた後,なんと表現したらよいのか…「無音」でした。心が,ですかね。派手な演出もなく,クライマックスシーンもなく,本当に淡々と,静かに終わります。見終えたあとの,なんともいえない心の静けさは今までにない感情でした。

 

『何も知らなかった。私に罪はない』

 

 内容はまだ公開中の映画ですので控えますが,この一言が全てだと思います。そして,この映画は,ポムゼルさんの独白や途中の衝撃的なアーカイブ映像を見て戦争の怖さを学ぶというものではなく,むしろ現代への警笛と見るべきなんじゃないかと思います。

 ポムゼルさんは当時なぜ人々があんなにゲッベルスの演説に熱狂しているのかわからないままに拍手を送っていたと回想するシーンがあります。今思えば違う見方もできるかもしれないが,当時はそれがわからなかった,と。サッカーの試合後に誰かの迷惑になってることも考えることなく渋谷の街を占拠して騒げるのが私たちです。あの中の何人がサッカーの結果で心からあの行動に出たといえるでしょうか。多くの人がなぜ騒いでるのかその理由はわかってなかったはず。だから,日本だっていつこの状況に陥ったっておかしくないんだよな,とふと感じました。

 見終えたあとの爽快感はゼロですが,たんなる戦争モノなどとは違う「迫力」を感じられる映画です。最後に,僕が一番印象に残ったポムゼルさんの一言を載せておきます。

 

 「悪は存在するわ。何と言えばいいのか分からないけど神は存在しない。悪魔は存在する。正義なんて存在しない。正義なんてものはないわ。」

 

《公式リンク》 

www.sunny-film.com